リバー・ランズ・スルー・イット 感想
リバー・ランズ・スルー・イット
詩的で哲学的な映画です。
マクリーン家ではフライ・フィッシングの釣果は「神の恵み」です。
岩の下には神の言葉があり、川は岩の上を流れ続けています。
最後に親子3人で出かけた釣りで、大物のトラウトを釣り上げたポールは、直前に川の深みに入って流されていました。
川に抱かれ、神の恵みを手に入れたポールは、この日誰よりも神に愛された存在だったにちがいないと思います。
でもほどなく、おそらく喧嘩が原因で命を落とし、家族に深い悲しみを与えます。
後日、父は教会での最後の説教で、
「大事な存在に手を差し伸べたいと思っても、どうやっていいかわからないし、相手に拒絶されることもある。理解することもできない。それでも、すべてを愛することはできる。」
と語ります。ノーマンは父の言葉を、亡き弟ポールに重ねます。
ポールの態度は「手を差し伸べられたい」とは思っていないようにみえましたが、究極の「だめんず」として登場したジェシーの兄ニールのことを
「彼は誰かに助けて欲しいと思っているんだ」と、唐突にノーマンにいいます。
このときポールは、ニールの中に自分を見ていたのでしょうか?
ロバート・レッドフォードによるナレーション
Eventually, all things merge into one, and a river runs through it.
は、弟も両親も妻も友人もすでに亡くしてしまった老境のノーマンが、ひとりでフライ・フィッシングをしているシーンで流れる言葉です。
all thingsというのは、悲喜こもごもの人生あるいは、親しかった人、愛した人たちのことでしょう。そういう諸々が岩の下で神の言葉と一体になり、川はそこを流れている、という意味なのか?
むかし映画館で観たときの印象は、モンタナの山と川の美しさと、すでに29歳だったことが信じがたいブラッド・ピットの初々しさでした。
もう一度、映画館の大スクリーンで観たい作品です。
アンカーウーマン 感想
アンカーウーマン 感想
BSプレミアムのロバート・レッドフォード特集ウィークの第4弾でした。
ご機嫌な「スティング」のあと、「追憶」「華麗なるヒコーキ野郎」と、作品が描く時代の価値観や死生観についていけなかった映画が続きましたが、「アンカーウーマン」はよかったです。
実話に基づいた物語ということでしたが、マイ・フェア・レディみたいなハッピーエンドでよかったのに、と思ってしまいました。
ウォーレンがパナマに行くことになった時点で、イヤな予感はしていたんですけどね~
ミシェル・ファイファーに泣かされました(T_T)
いい映画でした!
バグダッド・カフェ 感想
バグダッド・カフェ 感想
砂漠の中のハイウェイ沿いにある、モーテル兼ガソリンスタンド兼カフェを舞台とした群像劇です。
働かない旦那に愛想を尽かし、生活に追われていっぱいいっぱいの女主人ブレンダの心は、周辺の砂漠と同じように荒んでトゲトゲしく、店も女主人の心境を映してか、散らかりっぱなしでホコリがつもり、閑散としています。
このカフェに、これまた旦那と喧嘩別れしたドイツ人旅行者の巨漢女ヤスミンが、スーツケースを引っ張りながらトボトボ歩いて辿りつきます。
行くあてのないヤスミンは、空いていたモーテルの部屋に居着いてしまい、はじめはブレンダから煙たがられますが、ヤスミンの小さなおせっかいからカフェの空気が変わりはじめ、やがて砂漠の中のオアシスのような場所になっていくという物語。
大きな事件は起こらず、美男も美女も出てきませんが、1989年に公開されたときは日本のミニシアターブームを牽引する代表作とされた作品です。
砂漠のザラザラした質感が伝わる映像と、主題歌の「Calling You」が印象的でした。影の使い方が上手い、と感じました。
公開から20年近く経ってつくられたニュー・ディレクターズ・カット版は、2008年にカンヌ国際映画祭で上映されています。
息の長い、映画好きに好かれる映画なのでしょうね。
芸術性が高く評価されている作品ですが、やっぱり映画にはエンタメ性を求めてしまう僕は、もう一度観たいとは思いませんでした。
純文学よりもミステリーがいいですね~